電気工事士・電気主任技術者の資格は再エネでどれだけ効くか
「電気工事士だけ持ってるんですけど、太陽光の会社に転職できますかね」
皆さま、この質問を聞いてどう感じますか。実は、この質問の立て方そのものに、少しズレがあります。再エネの現場で聞かれるのは「持っているか・いないか」ではなく「どの資格を、どの実務と、どの立地で組み合わせているか」だからです。資格は再エネでは間違いなく効きます。ただし効き方が資格の種類によって全く違う、というのが率直なところです。
今回は、電気工事士(第二種・第一種)、電気主任技術者(電験三種・二種)、認定電気工事従事者、施工管理技士という主要な電気系資格が、太陽光施工・高圧連系・O&M保守・保安管理という4つの現場でそれぞれどう価値化するのかを、僕がキャリア面談で聞いてきた実感も交えながら整理します。
0. 前提 — 再エネの電気資格は「二段構造」だと理解する
まず頭に入れておいてほしいのが、再エネの電気系資格は大きく「施工側」と「保安側」の二段構造になっているということです。施工側は電気工事士(第二種・第一種)が入口で、太陽光パネルの配線や接続箱、パワーコンディショナの設置といった、実際に手を動かす工事を担います。保安側は電気主任技術者(電験)が入口で、発電所全体の維持・運用に責任を持つ、法律上の「置かなければいけない人」の資格です。ここが今回の隠れた主役です。同じ「電気の資格」という言葉でくくられがちですが、施工側と保安側では求められる知識も、キャリアの伸び方も、はっきり別物です。
1. 電気工事士 — 太陽光施工の「入場券」
電気工事士は、電気技術者試験センターが実施する国家資格で、第二種と第一種の2段階に分かれています。第二種は住宅・小規模な太陽光(一般用電気工作物の範囲)の配線工事ができる資格で、再エネの施工職に入る際の事実上の入場券です。屋根置きの家庭用太陽光や小規模な蓄電池の設置工事では、この第二種を持っているかどうかで、そもそも作業に入れるかどうかが変わります。
第一種は、より規模の大きい自家用電気工作物(高圧受電設備を含む)の工事に対応できる資格です。再エネで言えば、野立ての産業用太陽光や、高圧・特別高圧で系統に連系する発電所の施工がここに入ってきます。第7次エネルギー基本計画(2025年閣議決定)で再エネが主力電源として位置づけられ、太陽光の設置は住宅の屋根だけでなく荒廃農地や工場屋根など多様な立地に広がっている、と資源エネルギー庁の資料で説明されています。立地が広がるほど、案件ごとの電圧区分もばらつくため、第二種で止まらず第一種まで取得しておくと、対応できる現場の幅が一段広がります。
なお、電気工事士の資格がなくても、認定電気工事従事者という制度を使えば、一定の条件下で自家用電気工作物の簡易な工事に従事できます。第二種電気工事士に認定電気工事従事者講習を足すルートは、太陽光施工の未経験者が最短で現場に入るための、いわば近道として使われることが多い資格の組み合わせです。
2. 電気主任技術者(電験) — 「置かなければいけない人」という希少性
ここからが、再エネ領域で電気系資格が最も強く効く場所の話です。電気事業法では、一定規模以上の発電設備(高圧・特別高圧で系統に連系する太陽光・風力発電所など)には、保安の監督を行う電気主任技術者を選任することが義務づけられています。つまり電験は、「あれば有利」ではなく「いないと発電所を稼働させられない」種類の資格です。
電験三種は第一種・第二種電気工事士よりも一段上の、発電所の保安管理そのものを担える国家資格です。この電験三種を持つ人材は、再エネの発電所が増えるスピードに対して、慢性的に不足しがちな構造にあると言われています。理由は単純で、電験は電気技術者試験センターの公表データによれば合格率がおおむね1〜2割台で推移してきた難関資格であり、かつ既存の保有者が高齢化・引退していく一方で、太陽光・風力の新設案件は増え続けているためです。1人の電気主任技術者が複数の発電所を兼任する体制で保安管理会社が回している、というのは僕が業界の方から聞く体感値ですが、それだけこの資格の希少性が高いということでもあります。
電験二種はさらに上位の資格で、より大規模・高電圧の設備を扱えます。風力発電やメガソーラーの中核を担う保安管理会社では、電験二種の保有者は明確に別枠の評価を受けている、というのが僕の見聞きする範囲での実感です。
3. 施工管理技士 — 現場を「束ねる」ための資格
電気工事士や電験が「電気そのもの」の資格だとすると、電気工事施工管理技士は「工事全体を管理する」ための資格です。1級を持っていると、太陽光発電所のような大規模案件で主任技術者・監理技術者として現場に配置できるようになり、EPC(設計・調達・建設を一括で担う)企業では現場責任者クラスの必須要件になっているケースが多く見られます。
3-1. 現場での使われ方。電気工事士だけでは「作業者」止まりですが、施工管理技士が加わると「工程・安全・品質を管理する側」に回ります。太陽光・風力の建設は屋外・傾斜地・高所での作業が多く、安全管理の比重が住宅工事よりも重い。ここに強みが出ます。
3-2. よくある誤解。「施工管理技士があれば電気工事士はいらない」と考える方がいますが、逆です。施工管理技士は現場を管理する資格であって、電気の実務知識の土台は電気工事士や電験で作られています。土台なしで管理だけを担おうとすると、現場で信頼を得るのに時間がかかる、というのが正直なところです。
4. 資格×実務×立地の掛け算で見る
ここまでを整理すると、再エネの電気系資格は単体の価値より、実務経験・立地とどう掛け合わさるかで効き方が変わるという結論になります。
| 資格 | 効く現場 | 効き方の目安 |
|---|---|---|
| 第二種電気工事士 | 住宅用太陽光・小規模蓄電池 | 入場券。未経験からの入口として機能 |
| 第一種電気工事士 | 産業用太陽光・高圧連系設備 | 対応できる案件の電圧区分が広がる |
| 電験三種 | 発電所全体のO&M・保安管理 | 法定の必置資格。需要が供給を上回りやすい |
| 電験二種 | 大規模メガソーラー・風力の保安管理 | 電験三種よりさらに希少。別枠評価が多い |
| 電気工事施工管理技士(1級) | EPCの現場責任者・監理技術者 | 現場を束ねる立場への足がかり |
※上表は僕が業界関係者や求職者との面談・現場の声から整理した目安であり、独自ガイドの目安値・統計値ではありません。個別の待遇・要件は企業により変動します。
立地の話も欠かせません。太陽光の適地は、荒廃農地や工場屋根、地方の遊休地に広がっている一方、風力(特に洋上)は特定の沿岸エリアに集中します。地方立地の発電所ほど、保安管理を担える人材の絶対数が少なく、電験三種以上の保有者は「その地域にいる」だけで声がかかりやすくなる、という現象が起きます。都市近郊の太陽光施工と、地方の風力保安管理では、同じ電気資格でも市場での希少度がまるで違う、と考えてください。
5. 取得順のモデル — どこから始めるか
未経験からこの領域を目指す方向けに、僕がよく提案する取得順のモデルを示します。
ステップ1:第二種電気工事士。まずここから。実務未経験でも受験でき、合格すれば太陽光施工の現場に入る土台ができます。
ステップ2:認定電気工事従事者講習+現場実務。第二種を取ったら、講習を受けて対応範囲を広げつつ、実際に太陽光やO&Mの現場で経験を積みます。ここでの実務経験が、次のステップの土台になります。
ステップ3:第一種電気工事士、または電験三種への分岐。施工の道を極めたいなら第一種電気工事士へ。発電所の保安管理という、より上流かつ希少性の高いキャリアを目指すなら電験三種へ。ここで進路がはっきり分かれます。
ステップ4(保安管理を選んだ場合):電験二種、そして施工管理技士との併せ持ち。電験三種で保安管理の実務を数年積んだのち、電験二種にステップアップする、あるいは施工管理技士を併せ持って現場統括にも回れるようにする、という広げ方があります。
6. 年収への効き方 — 「資格単体」ではなく「資格×実務年数」で見る
年収の話は慎重に扱う必要があります。本記事の年収に関する記述は、独自ガイドの目安値であり、公的統計そのものではありません。厚生労働省の賃金構造基本統計調査でも電気工事士や電験の資格別年収は公表されていないため、体感値としてお読みください。
一般的傾向として、第二種電気工事士のみ・未経験に近い層は、他業種の未経験転職と大きくは変わらない水準からのスタートになりやすいと感じます。ここに実務経験3〜5年が積み上がると、太陽光施工の中堅層として一段上の評価を受けるケースが多い、というのが僕の見聞きする範囲での実感です。さらに電験三種を保有し、保安管理の実務経験があると、複数の発電所を兼任できる立場として、施工職より高いレンジで評価される傾向がある、と業界の方から聞くことが多いです。電験二種まで到達し、大規模案件の保安管理を任される層になると、評価はさらに一段上がる、というのが体感的な傾向です。ただし、いずれも会社の規模・案件の電圧区分・地域によって幅が大きく、断定はできません。
(結論)資格は「入場券」であり「希少性の証明」でもある
まとめます。電気工事士は再エネ施工の入場券、電験は発電所の保安管理を担う「置かなければいけない人」の証明です。第7次エネルギー基本計画で再エネが主力電源に位置づけられ、太陽光・風力の設備が増え続ける限り、これらの資格の価値が急に薄まることは考えにくい、というのが僕の見立てです。特に電験三種以上は、資源エネルギー庁やJPEA(太陽光発電協会)の統計が示す設備量の伸びに対して、保有者の供給が追いつきにくい構造があると感じています。
どの資格から取るか、どの実務・立地と組み合わせるかは、あなたの現在地によって答えが変わります。太陽光施工の実務については別記事で詳しく書きましたし、蓄電池分野の技術資格の話も併せて読むと、電気資格を活かせる分野の幅が見えてきます。
皆さんいかがでしたでしょうか。資格は取っただけでは意味を持ちません。どの現場で、どの実務と組み合わせて使うかまで含めて、初めて「効く」資格になります。まずは当サイトの適性診断で、自分がどの分野・職種・立地に向いているかを確かめてみてください。では今日もがんばりましょう。
IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。
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